僕の名前は、「岳」といいます。読みは「ガク」。
最近は山やハイキングに熱心な人たちとの付き合いが増えて、自己紹介した時のウケがいい。
そして、息子にこんな名前を付けるくらいだから、「ご両親はさぞ山好きなのでしょう」などと言われるまでが1セットだ。
うちの両親は確かに山好きではあるのだけど、実のところそんなに熱心に山登りをしているわけではない。
子供のころ、家族旅行というと、八ヶ岳や裏磐梯などの高原へ出かけて行くことが多かった。しかし、たいてい山頂を目指すことはなく、歩くのは周辺のハイキングコース。
八ヶ岳は見る山だった。
ハイキングの後は宿で温泉に入り、食事を楽しみ、温かい布団で寝る、というのが定番の流れである。
間違っても大きな荷物を担いで、バーナーで自炊し、山小屋やテントで寝る、なんてことはしない。父は、そんな大変なことはしたくない、旅行中は快適にすごしたい、ときっぱり言い切っていた。
思えばいつも、「今年の8月はどこそこに旅行に行くぞ」とは言っていたけれど、「山登りに行くぞ」と言われたことはなかった。
山が目的なのではなく、単に旅行の楽しみの一つが山歩きだったのだ。
それでも、休みのたびにそういった場所に出かけて、それなりの時間をかけて山中の自然道を歩くわけだから、なかなかの山好きだと思う。
うちは3兄妹だから、子供3人連れての山歩きである。つくづく感心する。
八ヶ岳には僕が生まれる前からよく行っていて、僕の名前もそこからとって決めたらしい。
八ヶ岳はお気に入りの場所の一つだ。自分で山歩きをするようになってからは、大半の山頂に登っている。
歩きに行くたびに、良い名前をもらったものだと思う。

